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凍結工法
「凍結工法」は、地下の土壌や岩盤などを凍らせて、その固体化を利用して地中の工事を行う一種の地中工法です。この工法は、特に地下水や湿潤な地層でのトンネル掘削や地中の支保工事などに使用されることがあります。
凍結工法の基本的な手順は以下の通りです。
●井戸掘削と冷却
地中に複数の井戸を掘り、それらの井戸に冷却材(通常は液化窒素や冷却剤)を注入して地下の土壌を凍結させます。冷却材は井戸間を循環して冷却効果を高めることがあります。
●凍結ゾーンの形成
冷却によって凍った土壌は、固体状態で保たれます。この凍結した土壌を利用して周囲の地層を固定したり支保工事を行ったりします。
●工事の実施
凍結ゾーンが形成されたら凍っている土壌を掘削したり支保材料を設置したりする作業を行います。凍結ゾーンの安定性を利用して安全に地中工事を進めることができます。
凍結工法の利点は、以下のような点が挙げられます。
・地下水の制御: 地下水の浸透や流出を抑制し工事現場を乾燥させることができます。
・安全性向上: 凍結によって地層が固定されるため地下空間の崩壊や土砂崩れのリスクが低減します。
・作業環境の改善: 地下の湿潤な環境での作業が難しい場合でも凍結工法によって作業環境を改善できます。
ただし、凍結工法は高度な技術と専門知識を要するため適切な計画と管理が必要です。また、環境への影響や凍結に伴う地下構造の変化にも注意が必要です。凍結工法は特定の条件下で使用されることが多く工事の性質や地質条件によって適否が判断されます。
止水ができない時の凍結工法を用いるメリット
止水ができない時の凍結工法を用いるメリットは、水の供給が止められない現場やバルブの不具合で止水が不可能な状況でも管内の一部を凍結させることで強制的に水の流れを遮断できる点にあります。従来のバルブ操作による止水が機能しない場合でも液体窒素などを用いて配管内の水を凍らせることで氷柱による物理的な栓が形成されるため確実な止水が可能となります。この方法により周囲の給水設備や他の系統に影響を及ぼすことなく局所的な作業が実現できます。特に病院や工場など常時水の供給が求められる施設では全体の断水を避けることができるため大きな利点があります。またバルブの交換や配管の一部修繕などの作業を伴う場合でも広範囲な止水措置を取る必要がなく短時間かつ効率的な対応が可能です。さらに管内に圧力がかかっている状態でも凍結によって止水されるため不意な水の噴出や作業中のトラブルを未然に防ぐことができます。この結果として安全性が確保され現場作業員のリスクも大幅に低減されます。設備が古く図面が不明確な現場においても既存のバルブを無理に使用せずに凍結止水により柔軟な対応ができます。加えて凍結工法は管の材質や口径に応じた適切な対応が可能であり金属管や一部の樹脂管でも十分な止水性能を発揮します。作業前後の復旧も比較的容易であり凍結解除後は自然な通水状態へ戻るため追加工事や水圧調整の負担が少なく済みます。これらの特性により緊急対応や時間制限のある現場でも高い即応性と作業効率を発揮する点が大きなメリットとなります。凍結工法は水道設備の保守管理において止水困難な状況を打開する有効な手段として高く評価されており近年では水道業者による導入実績も増加しています。